有形固定資産

「簿記とは何か」で学んだように、簿記学習の最終目標は貸借対照表と損益計算書の作成です。

そのため、期末において、いくつか修正仕訳を行ったり、帳簿を締め切ったりなど、一連の手続きを行う必要があります。
この一連の手続きのことを「決算」と言います。
決算は次のような流れで行います。

  1. 試算表の作成
  2. 決算整理
  3. 振替と締切

では、手順にそって各々の処理を見てみましょう。

試算表の作成

  1. 試算表の作成
  2. 決算整理
  3. 振替手続
  4. 帳簿の締切

試算表は、「取引の転記と集計」でみたように、総勘定元帳の各勘定の残高または合計金額を集めて作成した一覧表です。

試算表には

  1. 合計試算表
  2. 残高試算表
  3. 合計残高試算表

の3つがありました。忘れてしまった人は、「取引の転記と集計」を見直しておいてください。

決算整理

  1. 試算表の作成
  2. 決算整理
  3. 振替と締切

毎日の取引を正しく仕訳したとしても、いくつかの事項については、期末において、帳簿を修正する必要があります。
この修正手続を決算整理といい、その仕訳を決算整理仕訳といいます。
決算整理には、次の8項目があります。

  1. 現金過不足の処理
  2. 売上原価の算定
  3. 貸倒引当金の設定
  4. 売買目的有価証券の評価
  5. 減価償却費の計上
  6. 費用と収益の見越しと繰延べ
  7. 消耗品の処理
  8. 引出金の処理

これらについて、順番に確認していきましょう。

ではまず、

  1. 現金過不足の処理

から。

「現金預金取引」でみた「現金過不足」は、期中での現金の帳簿残高と実際有高が異なったときに使われる仮の勘定でした。
違いの原因がすべて判明した場合には、すべて正しい勘定科目に振り替えられ、現金過不足はゼロになります。
しかし、調査しても原因不明で、「現金過不足」が期末まで残ってしまった場合には「雑損」(費用)または「雑益」(収益)勘定に振り替えます。

原因不明で期末を迎えた場合の例を見てみましょう。

「期中で不足だった¥1,000の原因が、期末になっても判明しなかったので適切な処理を行う」の決算整理仕訳
雑損 1,000 現金過不足 1,000

もともと期中では、以下の仕訳が行われていました。

現金過不足 1,000 現金 1,000

そこで、決算において、現金過不足を雑損に振替えます。

次に

  1. 売上原価の算定

を見ていきましょう。

三分法で仕訳を行っている場合は、商品を仕入れたときに「仕入」(費用)で処理をしました。
しかし、最終的に費用となるのは、販売した商品に対応する原価、すなわち売上原価なので、決算において、仕入原価を売上原価に修正する仕訳が必要があります。

具体的に見ていきましょう。

「当期の仕入高が¥1,000、期首の商品棚卸高が¥200、期末の商品棚卸高が¥300であった」の決算整理仕訳
仕入 200 繰越商品 200
繰越商品 300 仕入 300

やり方だけ先にいえば、

  1. 期首にあった商品(「繰越商品」(資産)で記録されています)を「仕入」(費用)に振替える
  2. 期末に残っている商品(「仕入」(費用)で記録されています)を「繰越商品」(資産)に振替える

です。

まず、期中には、

仕入 1,000 現金 1,000

のような仕訳が行われていますが、このままでは仕入原価¥1,000が費用になってしまいます。
そこで、売上原価に修正をする必要があるのです。

ここで、売上原価は以下のように算定されます。

売上原価¥900=期首商品棚卸高¥200+当期商品仕入高¥1,000-期末商品棚卸高¥300

ですので、仕入原価¥1,000に期首の商品¥200を足して、期末の商品¥300を差し引けば、売上原価¥900が求まるというわけです。

決算整理その2

次に、

  1. 貸倒引当金の設定

を見ていきましょう。得意先の倒産などにより、受取手形や売掛金の回収が不可能になることを”貸倒れ”といいます。貸倒れが発生した場合には、受取手形や売掛金などの資産が減少した分だけ損をします。

しかし、簿記では、予想される損失は早めに計上しようという考え方に基づき、翌期以降に貸倒の発生が予想される場合、将来の貸し倒れに備えて、決算時に貸倒の見積額を費用として予め見越し計上しておきます。

ただし、まだ実際に貸倒れが発生したわけではないので、受取手形や売掛金を直接減額することはできません。そこで、資産を間接的に減少させるため、「貸倒引当金」(資産のマイナス)という資産のマイナスを意味する勘定科目を用いるとともに、見積りの費用は「貸倒引当金繰入」(費用)を計上します。

貸倒引当金は、受取手形や売掛金など対象となる項目に、見積もった貸倒率を掛けて計算します。すなわち、

貸倒引当金=設定対象×設定率

で計算をします。

それでは、貸倒引当金の処理を見てみましょう。

「当社では、新たに貸倒引当金の計上することにした。売掛金の期末残高¥2,000に対して、3%の貸し倒れを見積もった」の仕訳
貸倒引当金繰入 60 貸倒引当金 60

貸倒引当金繰入(費用)を計上するとともに、貸倒引当金(資産のマイナス)を用いて、資産を間接的に減額します。貸倒引当金の額は
売掛金¥2,000×設定率0.03=¥60
と計算します。

実際に貸倒が起きた時の処理を見てみましょう。

「得意先が倒産したため、売掛金¥400が貸倒になった。なお、貸倒引当金残高は¥400ある」の仕訳
貸倒引当金 400 売掛金 400

売掛金(資産)と貸倒引当金(資産のマイナス)を相殺します。

当初見積もった貸倒引当金の額を超えて貸倒れた場合の処理も見てみましょう。

「得意先が倒産したため、売掛金¥500が貸倒になった。なお、貸倒引当金残高は¥300ある」の仕訳
貸倒引当金 300 売掛金 500
貸倒損失 200

見積もった損失、すなわち貸倒引当金でまかないきれない損失に関しては、「貸倒損失」(費用)で処理します。

貸倒引当金は、貸倒を予想して計上しているだけなので、実際には貸倒が発生するとは限りません。それゆえ、期末の段階で貸倒引当金の残高はまだ残っている可能性があります。この場合には、貸倒引当金の額を設定すべき見積額に戻すため、見積額と期末の時点で残っている貸倒引当金残高との差額を繰り入れます。例を見てみましょう。

「売掛金の期末残高¥10,000に対して、3%の貸し倒れを見積もった。ただし、貸倒引当金残高が¥200ある」の仕訳
貸倒引当金繰入 100 貸倒引当金 100

見積額:¥10,000×0.03=¥300、より、当期繰入額=¥300-¥200=¥100となります。

なお、残高の方が見積額よりも大きい場合には、超過額を「貸倒引当金戻入」(収益)で戻し入れる処理をします。

「売掛金の期末残高¥10,000に対して、3%の貸し倒れを見積もった。ただし、貸倒引当金残高が¥500ある」の仕訳
(単位:)
貸倒引当金 200 貸倒引当金戻入 200

見積額:¥10,000×0.03=¥300、より、当期繰入額:¥300-¥500=△¥200、つまり¥200の戻し入れを行います。

次に

  1. 売買目的有価証券の評価

を見ていきましょう。

売買目的有価証券には、市場価格(時価)が存在します。そのため、通常、帳簿価額と期末における時価とが一致しません。
そこで、期末において、売買目的有価証券の帳簿価額を時価に評価替えします。このような処理方法を時価法といいます。

評価替えによる差額は、「有価証券評価損」(費用)または「有価証券評価益」(収益)として計上します。
では、例を見てみましょう。

「売買目的で所有している取得原価¥10,000の株式について、決算期における時価を調べたところ、¥9,000だったので、評価替えを行う」の仕訳
(単位:)
有価証券評価損 1,000 売買目的有価証券 1,000

売買目的有価証券(資産)を減少させるとともに、有価証券評価損(費用)を計上します。

次の

  1. 減価償却費の計上

については、「有価証券・有形固定資産」ですでに学習したので省略します。忘れてしまった人はよく確認しておいてください。

次に

  1. 費用と収益の見越しと繰延べ

について見ていきましょう。

1年間の儲けを正確に計算するために、当期の収益と当期の費用をきちんと把握することが必要です。
特に、時の経過とともに発生する「利息」、「家賃」、「保険料」、「地代」については、代金の支払いや受け取りに関係なく、発生した期間に正しく割り当てなければなりません。

費用と収益に関して、繰延べと見越し計上があるので、合計4つのパターンについて例を見てみましょう。

まずは、費用の繰延べからみていきます。
費用の繰延べでは「前払○○」(資産)を使い、費用を次期に繰延べます。

「当期は、支払保険料¥12,000を4月1日に向こう1年分前払いした。決算日は12月31日である」の決算整理仕訳
前払保険料 3,000 支払保険料 3,000

これは、4月1日の段階で

支払保険料 12,000 現金 12,000

のような処理が行われているので、決算時に、次期の1月から3月までの3か月分¥3,000について繰延べます。

次は、収益の繰延べを見てみましょう。
収益の繰延べでは「前受○○」(負債)を使い、次期に収益を繰延べます。

「受取手数料¥12,000は4月1日に向こう1年分を受け取ったものである。決算日は12月31日である」の決算整理仕訳
受取手数料 3,000 前受収益 3,000

これは、4月1日の段階で

現金 12,000 受取手数料 12,000

のような処理が行われているので、決算時に、次期の1月から3月までの3か月分¥3,000について繰延べます。

次に、費用の見越しを見てみましょう。
費用の見越しでは「未払○○」(負債)を使い、当期に費用を見越します。

「当期の4月1日から借りている月額¥10,000の家賃の支払いは来年である。決算日は12月31日である」の決算整理仕訳
支払家賃 90,000 未払家賃 90,000

決算日には現金での支払いなどはありませんが、すでに9か月分の費用は発生しているので、見越し計上します。

最後に、収益の見越しを見てみましょう。
収益の見越しでは「未収○○」(資産)を使い、当期に収益を見越します。

「当期の4月1日から貸しているお金の利息は月額¥10,000で、受け取りは来年である。決算日は12月31日である」の決算整理仕訳
未収利息 90,000 受取利息 90,000

決算日には現金の受取はありませんが、すでに9か月分の収益は発生しているので、見越し計上します。

では、次に

  1. 消耗品の処理

についてみていきましょう。

期中に文房具等の消耗品を購入した時には

  1. 「消耗品」(資産)で処理する方法
  2. 「消耗品費」(費用)で処理する方法

の2つがあります。1を採用している場合には、当期に使った消耗品を費用として振り替える処理をします。また、2を採用している場合には、当期に使っていない消耗品を資産として振り替える処理をします。

それでは、まず1の例から見てみましょう。

「消耗品の帳簿価額¥10,000のうち期末未使用高が¥2,000ある。なお、当社では消耗品購入時に消耗品で処理している」の決算整理仕訳
消耗品費 8,000 消耗品 8,000

これは、期中に

消耗品 10,000 現金 10,000

のような処理が行われているので、消費した¥8,000を費用に振り替えます。

次に2の例を見てみましょう。

「消耗品の帳簿価額¥10,000のうち期末未使用高が¥2,000ある。なお、当社では消耗品購入時に消耗品費で処理している」の決算整理仕訳
消耗品 2,000 消耗品費 2,000

これは、期中に

消耗品費 10,000 現金 10,000

のような処理が行われているので、未消費¥2,000を資産に振り替えているのです。

最後に

  1. 引出金の整理

について見ていきましょう。

店主が個人のために企業のお金を使用した場合、期中は「引出金」(純資産のマイナス)という仮の勘定科目を利用しているときがあります。引出金は結局のところ、資本の払い戻しにあたるので、決算時には資本金(純資産)に振り替えます。

「¥5,000の引出金を資本金に振り替える」の仕訳
資本金 5,000 引出金 5,000

振替と締切

では、最後に

  1. 試算表の作成
  2. 決算整理
  3. 振替と締切

を見ていきましょう。

決算整理を終えたら、あとは、当期の帳簿を整理し、来期に向けて準備をするだけです。その準備には、振替と締切の2つがあります。

では、まず費用と収益の振替(損益振替といいます)についてみていきましょう。

費用と収益はもうけ(または損失)を求めるため、期中を通じて記録してきました。決算では収益の勘定と費用の勘定をすべて、「損益」という勘定に振り替えて、儲けを計算します。

例えば、総勘定元帳に

売上
2,000

とある場合には

売上 2,000 損益 2,000

という仕訳を行い、売上を損益に振り替えます。他にも、収益である受取利息なども同様に損益に振り替えます。

また

仕入
1,500

とある場合には

損益 1,500 仕入 1,500

という仕訳を行い、仕入を損益に振り替えます。
損益振替によって、損益勘定の貸方には収益、借方には費用が集計されました。
この貸借の差額によって、当期の利益(当期純利益)が計算できます。

次に、計算された当期純利益(損失)を、資本金勘定に振替えます(資本振替といいます)。例えば、損益振替によって、総勘定元帳が

損益
仕入 1,500 売上 2,000

となっている場合には、貸借差額¥2,000-¥1,500=¥500が当期純利益なので、

損益 500 資本金 500

という仕訳を行い、¥500を資本金に振り替えます。

これにより、収益や費用に関する勘定項目の貸借はすべて一致するはずなので、次のようにニ重線を書いて締切ります。

仕入
1,500 損益 1,500
売上
損益 2,000 2,000
損益
仕入 1,500 売上 2,000
資本金 500

最後に、資産と負債と資本金の勘定については、「次期繰越」と書いて締切ります。
例えば、帳簿に

現金
5,000 4,000

などとある場合には、貸借合計を一致させるべく、以下のように次期繰越は¥1,000であることを、残高とは反対側に明記するとともに、次期のために、今度は通常のポジションに「前期繰越1,000」を記入します。

現金
5,000 4,000
次期繰越 1,000
前期繰越 1,000

それでは、この章の確認問題にチャレンジしてみよう!

決算整理確認問題1
決算整理確認問題2
決算整理確認問題3
決算整理確認問題4

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