貸付金・借入金
この章では、いろいろな債権や債務について学習をしていきます。
まずは、「貸付金」(資産)と「借入金」(負債)から見てみましょう。
お金を貸したときには、返してもらえる権利が発生します。この権利(債権)は「貸付金」(資産)で処理します。逆に、お金を借りたときには、返す義務が発生します。この義務(債務)は「借入金」(負債)で処理します。
それでは、まず貸した場合の例から見てみましょう。
貸付金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
現金(資産)が減少するとともに貸付金(資産)が増加します。
次に、貸したお金を返してもらった場合の例を見てみましょう。
現金 | 1,050 | 貸付金 | 1,000 |
受取利息 | 50 |
貸付金(資産)が減少すると同時に現金(資産)が増加します。利息分は受取利息(収益)とします。
次に、借りる場合の例を見てみましょう。
現金 | 1,000 | 借入金 | 1,000 |
借入金(負債)の増加とともに現金(資産)が増加します。
借りたお金を返す場合の例を見てみましょう。
借入金 | 1,000 | 現金 | 1,050 |
支払利息 | 50 |
先ほど計上した、現金(資産)と借入金(負債)が減少する一方で、支払った利息は支払利息(費用)とします。
手形貸付金・手形借入金
お金の貸し借りの際に、通常は借用証書を交わしますが、手形を用いる場合があります。
単なる貸し借りと違い、手形を発行する分、借りる側の責任が増します。
商品売買の際に手形を用いる場合は、「受取手形」(資産)や「支払手形」(負債)で処理しましたが、お金の貸し借りで手形を用いる場合は、「手形貸付金」(資産)や「手形借入金」(負債)で処理します。
では、貸した場合の処理を見てみましょう。
手形貸付金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
現金(資産)の減少とともに、手形貸付金(資産)が増加します。受取手形(資産)ではない点に注意してください。
では、借りた場合の処理を見てみましょう。
現金 | 1,000 | 手形借入金 | 1,000 |
こちらも支払手形(負債)ではない点に注意してください。
未収金・未払金
商品売買では、代金を後で受け取る権利は「売掛金」(資産)、代金を後で支払う義務は「買掛金」(負債)を用いました。
しかし、販売用の商品ではなく、商品以外の資産、たとえば車や土地などを売買した場合は、代金を後で受け取る権利は「未収金」(資産)、代金を後で支払う義務を「未払金」(負債)で処理します。
会社の本来の業務とそれ以外とで、勘定科目を区別して管理をするのです。
まずは、未収金について見てみましょう。
未収金 | 12,000 | 土地 | 10,000 |
土地売却益 | 2,000 |
土地(資産)が減少するとともに未収金(資産)が増加します。また、土地を売って儲けた分は「固定資産売却益」(収益)とします。なお、もし損をしたら「固定資産売却損」(費用)となります。
未収金を回収した場合の処理は次のようになります。
現金 | 12,000 | 未収金 | 12,000 |
未収金(資産)が減少するとともに、現金(資産)が増加します。
つぎに、未払金について見てみましょう。
土地 | 12,000 | 未払金 | 12,000 |
土地(資産)が増加するとともに、未払金(負債)も増加します。
未収金を支払った場合の処理は次のようになります。
未払金 | 12,000 | 当座預金 | 12,000 |
未払金(負債)が減少するとともに、当座預金(資産)も減少します。
前受金・前払金
商品を売買するとき、予約する意味で、手付金(内金ともいう)として代金の一部を授受することがあります。
手付金を支払ったときは、後で商品を引渡してもらえる権利が生じます。これを「前払金」(資産)で処理します。
また、手付金を受け取ったときは、後で商品を引き渡す義務が生じます。これを「前受金」(負債)で処理します。
まず、前払金(資産)の例を見てみましょう。
前払金 | 1,000 | 現金 | 1,000 |
現金(資産)の減少とともに、前払金(資産)が増加します。なお、仕入れの契約だけでは、いまだ仕入れていないので、仕入(費用)を計上してはいけません。
次に、商品を仕入れたときの例を見てみましょう。
仕入 | 5,000 | 前払金 | 1,000 |
現金 | 4,000 |
商品を仕入れたので、前払金(資産)を減少させます。
今度は、前受金(負債)の例を見てみましょう。
現金 | 1,000 | 前受金 | 1,000 |
現金(資産)の増加とともに、前受金(負債)が増加します。注文を受けた(契約)だけでは、いまだ売上げていないので、売上(収益)を計上してはいけません。
次に、売上を計上するときの例を見てみましょう。
前受金 | 1,000 | 売上 | 5,000 |
現金 | 4,000 |
商品を売上げたので、前受金(負債)を減少させます。
ここで、売買と金銭授受に関する項目を整理しておきましょう。
商品売買 | 商品売買以外 | |
金銭の未授受 | 売掛金・買掛金 | 未収金・未払金 |
金銭の既授受 | 前払金・前受金 | 前払金・前受金 |
立替金・預り金
企業は、取引先や従業員のために、一時的に金銭の立替払いをすることがあります。
このときに発生する債権は立替金(資産)で処理します。
また、一時的に金銭を預かった場合の債務は預り金(負債)で処理します。
では、まず立替金から見てみましょう。
立替金 | 2,000 | 現金 | 2,000 |
現金(資産)が減少するとともに、立替金(資産)が増加します。従業員給料の前貸しは、契約書を交わすようなものではないので貸付金(資産)ではなく、立替金(資産)を使います。
立替金を清算するときの例を見てみましょう。
給料 | 5,000 | 立替金 | 2,000 |
現金 | 3,000 |
給料を支払ったときは、給料(費用)を用います。
そして、立替金(資産)¥2,000を減少させる一方で、差額¥3,000については現金(資産)を減少させます。
次に、預り金について見てみましょう。
給料 | 5,000 | 預り金 | 500 |
現金 | 4,500 |
源泉所得税や社会保険料は、給料から天引きし、一時的に会社が預かっておいて、後に国などに納めるので預り金(負債)を使います。
仮払金・仮受金
支払いはあったものの、それが何に使われたのかがまだ分からないときは「仮払金」(資産)で処理します。
また、何のお金かよくわからないけれど、とりあえず受け取ったときは「仮受金」(負債)で処理します。
まず、仮払金についてみていきましょう。
仮払金 | 5,000 | 現金 | 5,000 |
ここで、旅費(費用)を計上してはいけません。旅費の金額が確定していないので、「仮払金」(資産)で処理します。
仮払金の内訳が明らかになったときの処理を見てみましょう。
旅費 | 6,000 | 仮払金 | 5,000 |
現金 | 1,000 |
仮払金(資産)を減少させるとともに旅費(費用)を計上します。不足分¥1,000は現金(資産)の減少です。
次に、仮受金について見てみましょう。
当座預金 | 5,000 | 仮受金 | 5,000 |
内容が不明ですので、仮受金(負債)を計上します。
仮受金の内訳が明らかになったときの処理を見てみましょう。
仮受金 | 5,000 | 売上 | 5,000 |
仮受金(負債)を消去するとともに、売上(収益)の計上を行います。
商品券・他店商品券
自社が商品券を売ったときは、この件と引き換えに商品を引き渡す義務が生じるので、これを「商品券」(負債)で処理します。
また、他店が発行した共通商品券を受け取ったときは、後日他店との間で決済を行うので「他店商品券」(資産)で処理します。
まず、商品券の処理について見てみましょう。
現金 | 5,000 | 商品券 | 5,000 |
現金(資産)の増加とともに、商品券(負債)を計上します。
商品券が使われた場合の処理について見てみましょう。
商品券 | 5,000 | 売上 | 5,000 |
商品券(負債)を消去するとともに、売上(収益)を計上します。
次に、他店商品券の処理を見てみましょう。
他店商品券 | 5,000 | 売上 | 5,000 |
売上(収益)を計上するとともに、他店商品券(資産)を計上します。
他店商品券が決済された時の処理も見てみましょう。
現金 | 5,000 | 他店商品券 | 5,000 |
他店商品券(資産)が減少するとともに、現金(資産)が増加します。
それでは、この章の確認問題にチャレンジしてみよう!
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